またとないチャンス!「ピカソとその時代」展へ!その!
ベルクグリューン美術館の大改修工事で実現した世界巡回展!
芸術の冬!先日の「マリー・クワント」展に引き続き、
その話はこちら:ファッション好き必見!心ときめく「マリー・クワント」の世界!
「ピカソとその時代 ― ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」に行ってきました。
10月8日から1月22日まで東京・上野の国立西洋美術館で開催中です。
「ピカソとその時代 ― ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」はこちら:https://picasso-and-his-time.jp
ベルリンにある国立ベルクグリューン美術館のベルクグリューンとは、ドイツ生まれの美術商ハインツ・ベルクグリューンにちなんで名付けられています。
ハインツ・ベルクグリューンは1948年34歳の頃からパリで画廊を経営。
自分自身のために作品を集め、世界有数の個人コレクションを作り上げた人物です。
ベルクグリューンのコレクションは1996年以降、生まれ故郷であるベルリンのシャルロッテンブルグ宮殿に面した建物の中で公開されていました。
その主要作品を2000年にドイツ政府が相当な額で購入しています。
2004年にはベルクグリューンの90歳の誕生日を記念して、美術館の名称をベルクグリューン美術館と改称。数々の展覧会を開催し世界的な評価を得ている美術館として現在に至っています。。
今回、そのベルクグリューン美術館が2025年までの大改修に入ることになり、この世界巡回展が実現しました。
日本はその最初の開催地となり、ここ上野の西洋美術館で1月22日まで開催した後、大阪の国立国際美術館へ巡回、2月4日から5月21日まで開催される予定になっています。
ピカソ!クレー!マティス!ジャコメッティ!大好きな画家が勢揃い!
この展覧会では、ピカソの生涯にわたる作品をはじめ、ベルクグリューン美術館の膨大なコレクションの中から、20世紀の美術の素晴らしい作品の数々が紹介されています。
ベルクグリューンは晩年までコレクションの充実に磨きをかけ、特色あるコレクションにすることに努めていたそうです。
その結果、最終的には彼が最も敬愛した同時代の4人のアーティストの作品に重点が置かれていったそうです。
その4人が私の好きな画家ばっかりだったのも、今回の鑑賞を特別なものにしてくれました。
まずは今回の主役、パブロ・ピカソ。
そしてパウル・クレー、アンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティです。
この4人が共通して師と仰いだモダンアートの祖、ポール・セザンヌの作品も展示されています。
ベルクグリューン美術館のコレクションから97点、それに日本の国立美術館所蔵の11点の計108点の見応えある展示となっています。
ベルクグリューン美術館からの97点中76点が日本初公開というのも見逃せません。
そして音声ガイドのナビゲーターは長谷川博己さん!
こちらもお聞き逃しなく!
ハインツ・ベルクグリューンとは?
ハインツ・ベルクグリューンは1914年にベルリンでユダヤ人の家庭に生まれます。
しかし1933年1月にはヒトラーが首相に任命され、ドイツではナチスの恐怖政治が始まりました。
1936年、ベルクグリューンはナチス政権の抑圧を逃れてアメリカに渡り、フリーの美術ジャーナリストとして活動。
その後、サンフランシスコ美術館に勤務していました。
第二次世界大戦従軍後は、パリに戻って画廊を開き、やがて世界的な画商となります。
作品のみならず芸術家の人となりにも深い関心を持ち、ピカソ、マティスなどの作家や詩人、文学者と親交を深めたそうです。
ピカソとの出会いも「ダダ宣言」で知られる詩人、トリスタン・ツァラを介してだったそうです。
分かりやすい7つのテーマ!そしてほとんどが撮影OK!
今回の展示は「序章」に続いて、下の7つのテーマに分かれています。
- セザンヌー近代芸術家たちの師
- ピカソとブラックー新しい造形言語の創造
- 両大戦間のピカソー古典主義とその破壊
- 両大戦間のピカソー女性のイメージ
- クレーの宇宙
- マティスー安息と活力
- 空間の中の人物像―第二次世界大戦後のピカソ、マティス、ジャコメッティ
このように人物ごとに分けてくれたおかげで、それぞれの画家について体系的に理解することができ、とてもわかりやすかったです。
ほとんどが写真OKだったこともあり、2回に分けて私のつたないメモと紹介したいと思います。
序章:ベルクグリューンと芸術家たち
ピカソ「眠る男」(1942)
マティス「パリ、ベルクグリューン画廊の展覧会(1953)のためのポスター図案(1952)
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セザンヌー近代芸術家たちの師
20世紀美術に多大な影響を及ぼしたセザンヌは、ピカソを始めジャコメッティ、クレー、マティスらが揃って師と仰いだ芸術家でした。
セザンヌ「セザンヌ夫人の肖像」(1885―86頃)
ジャコメッティ「セザンヌ夫人の模写」(1956頃)
ジャコメッティは過去の巨匠の作品の模写を日課にしていたそうです。
尊敬するセザンヌやレンブラントなどです。
批判的に分析することで、自分の中で再構築したのだとか。
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ピカソとブラックー新しい造形言語の創造
ピカソは年代によって目まぐるしく作風を変えていった画家として知られています。
19歳ごろからの「青の時代」は友人の失恋死がきっかけだったのだとか。
ベルクグリューン美術館のピカソコレクションは、ピカソの少年期から晩年まで全ての時代を網羅しているそうです。
ピカソ「女の頭部」(1906-07)
ピカソ「裸婦《アヴィニョンの娘たち》のための習作」
面を線に、3次元を平面に置き換えるキュビズムのはじまり。
ピカソ「丘の上の集落(オルタ・デ・エブロ)」(1909)
1908年ごろからピカソとブラックの緊密な共同作業によるキュビズムの探求が始まります。
- 描く対象を単純なボリュームとして捉える
- カットグラスのような面で分割された対象を周りの空間と融合
- 文字やパピエコレ(壁紙や新聞紙などの断片を画面に貼り付ける)
など絵画の常識をくつがえすような新しいアイデアが次々と取り入れられました。
ブラックの作品のほとんどが撮影禁止だったので写真はありませんが、
もともと塗装職人だったとのことで、そういった経験に基づく手法を思いついたのですね。
こうしてキュビズムは芸術作品と現実の間に新しい関係を築きました。
20世紀美術の最も重要な革新です。
今回、ピカソとブラックの関係性、そしてキュビズムという今まで知っているようで知らなかった点を明確に説明してもらったのは大きな収穫でした。
まとめ
上野の国立西洋美術館で開催中の「ピカソとその時代」展に行ってきました。
今回ほとんどの作品が写真撮影可能だったので、2回に分けて記録することにします。
ベルリン国立ベルクグリューン美術館が2025年までの大改修に入ることで実現した世界巡回展です。
ピカソを中心にマティス、クレー、ジャコメッティと私の大好きな画家ばかり取り上げられているのも嬉しい限り。
音声ガイドのナビゲーターは長谷川博己さん!展示も解説も画家別に紹介されているのもとてもわかりやすくて、オススメです。