能面の視界を体験!復曲能「岩船」動画も!第3章能楽も楽しい!
東京国立博物館・日本の伝統芸能展、第三章は能楽!
東京国立博物館で開催中の日本の伝統芸能展が、とてもわかりやすくふだん見れない衣装や道具など本物を見せてくれる充実した内容が素晴らしいです。
第一章は歌舞伎でした:伝統芸能展 第1章・歌舞伎 明治32年の動画や本物衣装に感動!
会場で視聴できる明治32年に撮影された映画フィルムは、日本で初の重要文化財となったとても貴重なものです。
また実際の舞台衣装はとても豪華で素晴らしいものばかりでした。
第二章は文楽でした:伝統芸能展 第2章 人形・太夫・三味線一体の総合芸術!文楽!
義太夫と三味線の関係が対等で、どちらがリードするということもない駆け引きの中で作り上げていくというのを知り、まるでジャズのセッションのようだと驚きました。
また3人で人形を操ること、首(かしら)や衣装の作りなど、普段滅多に見ることのできない裏側を見ることができ、とても勉強になります。
会場となっている表慶館もこれまたとても素晴らしく、ぜひ訪れてほしい展示になっています。
表慶館はこちら:東京国立博物館の優美な洋館・表慶館が素敵すぎる!
第三章・能楽
能と狂言を合わせて 「能楽」とよびます。
それ以前は「猿楽(さるがく)」とよばれていたそうです。
鎌倉時代の猿楽は、 老人の神が登場する祝祷芸の「翁猿楽」をもって寺社の祭祀に参勤していました。
その余興だった演劇的な能を、観阿弥・世阿弥父子が芸術的に大成しました。
世阿弥のめざした能は、古典文学を典拠とする優美な主人公が、心に秘めた情念を、音楽や舞の情調に託して描き出すというもの。
特に死者の霊が仮の姿で現れ、後半には在りし日の姿で恋心や修羅の妄執を語る「複式夢幻能(ふくしきむげんのう」は、世阿弥が完成した形式だそうです。
厳粛・優美な歌舞劇、仮面劇である能に対し、狂言は笑いの要素の強い会話劇。
能と狂言は同じ猿楽から分かれた兄弟のような関係であり、「緊張と緩和」の補完的関係にあるといいます。
能舞台の展示は、3月に初公開となる復曲能 『岩船』をテーマとしています。
面・装束や楽器を間近で見ることができ、特に能面体験コーナーでは能面からの視界を体験することができます。
深淵なる面(おもて)の世界!
能楽(能と狂言)で用いる仮面は〈面・おもて〉と呼ばれ、非常に大切に扱われます。
能の面を能面、狂言の面を狂言面と呼びます。
能面はさらに5つに大別され、
老人をあらわす<尉面・じょうめん〉、
武将や少年などの男性をあらわす〈男面・おとこめん〉、
女性を〈女面・おんなめん〉、
怨念を持つ幽霊をあらわす 〈怨霊面・おんりょうめん〉、
神や天狗、鬼などをあらわすく鬼神面・きじんめん〉に分けられます。
現在使用されている面は約80種類ほどあり、演目・ 役柄・装束・演出などに合わせて能楽師が自ら選ぶそうです。
能面
小面(こおもて)
あどけなさの残る可愛らしい表情をした能面。
若い女性の役を中心に、幅広い役で用いられます。
増女(ぞうおんな)
こちらは「増女・ぞうおんな」、あるいは「増・ぞう」とも呼ばれる面。
頬の肉付きが薄く、鼻筋の引き締まった細面で、口の両端が引き上げられていないことから、小面よりもやや年配で気品があります。
泥眼(でいがん)
嫉妬と恨みの表情を見せる女性の面。
眼に金泥を施すところから「泥眼」の名称 があります。
金泥とは金の粉末を膠に溶かした絵の具のことです。
本来は仏など神々しい役の面 であったともいわれ、成仏した海人が竜女となって舞う能「海士 (海人)」にも用いられるそう。
般若(はんにゃ)
嫉妬と恨みから鬼と化した女性の面。
目から下の部分からは激しい怒りを、目から上の部分からは深い悲しみが感じられ、面の上半分と下半分とで鬼女の心の二面性を表現しているそうです。
頼政(よりまさ)
能〈頼政〉の後シテ源頼政の亡霊の専用面。
戦いに敗れた老武者の気骨と怨念を表しています。
狂言面
乙(おと)
「乙御前」の略。
鼻が低く両頬が大きく膨らみ、どこかユーモラスな表情が可愛い!
狂言では、男に逃げられる醜女や乙女、神仏や仏像など、多くの役に用いられます。
こんなに可愛らしいのに、男に逃げられる醜女ってひどい!
武悪(ぶあく)
狂言に登場する鬼の面。
一見恐ろしい鬼の相ですが、 舞台では喜怒哀楽、様々な感情が面から溢れ出ます。
人間が鬼に化けるための 「お面」として使うこともあるとか。
能面体験コーナーが面白い!
能面を体験するコーナーもあります。
あの細い目の奥からどのように見えるのか体験できて、とても面白いです。
自撮りしてみました。
装束
能装束
紅白段四季草花塩釜模様唐織(こうはくだんしきそうかしおがまからおり)
色糸に金銀を交えて織った布(唐織)を用いた装束。
能装束の中でも特に美しく豪華で、赤色の有無によって紅入(いろいり)と紅無(いろなし)に分けられるそうです。
紅入は若い女性の役に、紅無は中年以降の女性の役に用いられるとか。
紅白段雲龍模様厚板(こうはくだんうんりゅうもようあついた)
板のように厚い生地で作った装束。
男性の役の多くに用いられる他、鬼神の役などにも広く用いられるとか。
白地鱗模様摺箔(しろじうろこもようすりはく)
白地の絹に金箔や銀箔で細かい連続模様を摺り出した装束。
主に女性の役に用いるそうです。
このような三角形の鱗模様を摺った摺箔(鱗箔)は、鬼女や龍女の役に用いられるそうです。
黒地紋尽模様縫箔(くろじもんづくしもようぬいはく)
縫箔は、絹地に金箔を押し、色糸の刺繍を施した装束。
能・狂言問わず、男女どちらの役にも用います。
女性の役では袖を通さずに巻きつけるようにして着用するのだそう。
このような様々な家紋を刺繍でした機は、鬼女の役専用だとか。
とても可愛らしい着物だと思うのですが、鬼女専用って意外です。
納戸地破七宝繋唐花模様長絹(なんどじやぶれしっぽうからはなもようちょうけん)
長絹とは能特有の広袖の装束のこと。
天女や女神などの舞を舞う女性の役や、身分の高い武者の霊の役に用いられるそうです。
この長絹は武者の衣装で、右片方の袖を脱いで着用するのだとか。
黒地立波模様半切(くろじたつなみもようはんぎり)
袴の一種。
金糸などを用いた大柄で派手な模様が特徴。
背面は生地の間に畳表を入れて張りを出しているのだとか。
赤字に金の雪輪の縫箔
縫箔は、絹地に金箔を押し、色糸の刺繍を施した装束。
能・狂言問わず、男女どちらの役にも用います。
このような紅地の縫箔は狂言の女の役でも用いられるそう。
雪輪の金色、さまざまな花の丸模様が素敵です。
ベースの格子は檜垣模様でしょうか。
襟の部分も豪華です。
狂言装束
紺地亀甲模様素襖(こんじきっこうもようすおう)
武士の普段着として着用されていた装束。
浅葱地紋尽模様半袴(あさぎじもんもようはんはかま)
「狂言袴」ともいいます。
袴全体に丸文が散らされていて、 それぞれの紋は雪持笹や貝、傘、分銅など庶民にとって身近なものや吉祥文がモチーフになっています。
そして今回私が最もインスピレーションを受けたのがこちら!
紺地帆丸模様肩衣(こんじのにまるもようかたぎぬ)
庶民のいでたちだそうです。
素襖の上着の袖が取り払われて簡略化された装束。
太郎冠者などの庶民的な役に用いられるそう。
背面には動植物や道具、風景など身近な題材が描かれ、肩衣の模様を見るのも狂言鑑賞の楽しみの1つ。
今まで「帆」のマークには注目して色々みてきましたが、こんなに360度丸くなっているのは初めてです。
これは参考になります。
能舞台は3月に初公開の復曲能「岩船」!
動画は撮影禁止だったので写真はありませんが、
3月に初公開になる復曲能「岩船」の動画を見ることができ、それがとても興味深いものでした。
それにちなんで展示されている能舞台のテーマも「岩船」です。
真っ赤な船に積まれた宝物もとても興味深いものばかりでした。
まとめ
東京国立博物館で開催中の日本の伝統文化展、第三章の能楽。
本物の面や衣装の数々に加え、復曲能「岩船」の動画、そして舞台と、普段間近で見ることのできないものばかりで堪能しました!
おすすめです。