ちょっとしたルールを知って名実ともに「いい化粧品」を見極めよう
SNSにはあふれる目に余る化粧品広告
私は化粧品マニアでもフリークでもないので、いろいろな化粧品を使ったことはありません。
なのでさまざまな化粧品ブランドの製品を比較して記事を書いたりはできないし、する予定もないのですが、
それでも好きな化粧品はあって、それについてはご紹介したいなと思っています。
その化粧品が好きすぎて、他に手を出すつもりが今のところはない、ということもできます。
その化粧品のことを書こうと思ったのですが、その前に、化粧品広告のルールについてちょっと書こうかと思います。
ちょっとしたルールを知って自分にあった化粧品を見つけよう
私は前職で、自社の販売する化粧品の広告が法律に遵守したものであることを確認する仕事を、20年以上にわたり第一線で担当してきました。
なのでこの分野に関してはかなりの知見があると自負しています。
かといって、法律の難しいことを書こうとは思いません。
化粧品は今やコンビニでも雑貨屋さんでもどこでも購入できる身近な存在です。
そんな手軽に買える化粧品でも、その広告には結構厳しいルールがあることなど、おそらく一般の消費者の方はご存知ないことも多いと思います。
守るべきルールを守っていないひどい化粧品広告を見抜いて、自分にあった「いい化粧品」を見つけて欲しいと思うのです。
もちろん販売したり広告したりしている人たちがそのルールを守らないことが問題なのですが、そういったルール違反の広告があちこちにあふれている今、化粧品を使ったり買ったりする側も最低限のルールを知ることで、そんな悪質な広告をしている人たちを儲けさせなくて済むのです。
製品がいいことも大事ですが、どうせ買うなら企業の姿勢として正しいことをする「いい会社」の製品を買いたいですよね。
そもそも化粧品とは?ちょっとだけ法律の話
化粧品は薬機法という法律で規制されています。
管轄は厚生労働省です。
薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称です。
数年前までは「薬事法」という名称でした。
薬機法の対象は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品です。
薬機法の目的は
- 品質、有効性及び安全性の確保
- これらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行う
この薬機法で化粧品の定義が示されています。
「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものを言う。
一方、同じ法律で規制されている医薬品の定義はこちらです。
人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
違反広告とは 白髪が消える?シミが消える?法令線がなくなる?
朝ウォーキングしながらYouTubeを聴いているのですが、あの合間合間にはさまれてくる広告、鬱陶しいですよね。
数秒待って飛ばしてしまうことがほとんどですが、あのはさまれてくる広告に「白髪が生えてこない?」というのをよく見かけます。
これが違反広告のいい事例です。
白髪が生えて来なくなったり、シミが消えたり、法令線が無くなるなどの効果は化粧品の効果としては認められていません。
化粧品には「これが化粧品で言っていい効果です」という効果があらかじめ決まっています。
先程の化粧品の定義です。
「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものを言う。
これではちょっと具体的にわかりにくいので、これが化粧品だよ、と厚生労働省がリスト化しています。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/kesyouhin_hanni_20111.pdf
全部で56あるのですが、ヘアケアやひげ剃り、リップなども入っているので、スキンケアに関してのものはこんな感じです。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。 (18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。 (19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。 (21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。 (24)皮膚にうるおいを与える。 (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。 (26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
化粧品広告で言っている内容がこのリストになければ、それは同じ薬機法で規制されている「医薬部外品」や「医薬品」の分野に入り込んでしまっている可能性があります。
先程の事例を見てみましょう
毛髪についてのリストはこんな感じです。
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。 (2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。 (3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。 (4)毛髪にはり、こしを与える。 (5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。 (6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。 (7)毛髪をしなやかにする。 (8)クシどおりをよくする。 (9)毛髪のつやを保つ。 (10)毛髪につやを与える。 (11)フケ、カユミがとれる。 (12)フケ、カユミを抑える。 (13)毛髪の水分、油分を補い保つ。 (14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。 (15)髪型を整え、保持する。 (16)毛髪の帯電を防止する。
先程の「白髪が生えてこなくなる」効果はこのリストの中にあるでしょうか?
そのような効果はこのリストの中にはありません。
化粧品の効果の範囲を超えて、医薬部外品や医薬品など、他のカテゴリーに入り込んでいる可能性、つまり違反広告の可能性があるということになります。
例えば「白髪が生えてこなくなる」はどうでしょうか?
髪や白髪が生えてくる、というのは人体が持っている機能です。
その製品が実際どのようなメカニズムで白髪を生えてこさせなくなるのかは知りませんが、実際に白髪が生えてこなくなるのであれば、身体の機能に働きかけてそのような効果があるわけです。
そのような効果は医薬品の定義である「身体の構造や機能に影響を及ぼしている」に該当します。
ますます化粧品の広告としては不適切ということになります。
万一実際にその製品にそのような効果があるのであれば、それは化粧品ではなく医薬品として製造、販売、広告されなければならない、というわけです。
本当にそんな効果があったらどうなのでしょう?
では化粧品では言ってはいけない効果だとしても、実際そのような効果があったらどうでしょうか?
薬機法の言っていい、言ってはいけない、は実際の効果があるかどうかとは別物です。
というか、まっとうな会社であれば広告で言うなら事実であることは最低限のモラルだとは思いますが、そうでない会社もあるのかもしれません。
実際その製品に「白髪が生えてこなくなる」効果があったとしたら、その製品は化粧品ではなく医薬品として製造、販売、広告しなければならない、ということです。
それを製造、販売、広告した時点で、医薬品を「未承認」の状態で製造、販売、広告しているということになり、この観点からも違法だということになります。
ひどい化粧品広告を見抜いて、自分にあった「いい化粧品」を見つけましょう
違法な広告では今まで見たことや聞いたことのない効果を謳っているものが多いです。
それだけに消費者の興味を惹くことも事実です。
他であまり見かけない=新しい!となってしまうのです。
でもなぜ他であまり見かけないのでしょう?
他の会社は法令を遵守しているからそのような効果を広告で謳っていないからです。
気になる効果を謳っている化粧品広告を見かけたら、それが本当に化粧品として言っていい効果なのかちょっと考えてみてください。
不当な広告をしている会社かどうか見極めて、自分にあった名実ともに「いい化粧品」を見つけましょう!